和紅茶の世界

2000年頃から、息吹き返した和紅茶。
今では、全国の茶産地で個性のある和紅茶が生産されています。
・和紅茶の個性をかたちづくる要素「品種」
茶の木には大きく分けて、紅茶向きのアッサム系と、緑茶向きの中国系という2つの系統があり、日本では昔から中国系の「やぶきた」など緑茶用品種が多く栽培されてきました。こうした品種を使って紅茶を製造することも、日本ならではと言えます。
一方で、日本にも紅茶づくりに適したアッサム系の品種が存在しています。「べにふうき」や「べにひかり」など、名前に“紅”の文字をもつ品種は、日本で紅茶づくりを根づかせようと生まれた、特別な茶葉たちです。さらに、地域に根づき、種から育てられた「在来種」も、和紅茶の世界をいっそう豊かにしています。
現在、日本で製造される和紅茶の品種構成は、緑茶用品種が約半数を占め、紅茶用品種、そして在来種がそれに続きます。それぞれの品種がもつ香りや味わいのちがいが、一杯ごとに異なる表情を生み出しているのです。
・もう一つ、和紅茶の味を左右する「摘み取る時期」
春の一番茶はやさしく繊細な香り、夏の二番茶・三番茶ではややしっかりとした渋みが現れることがあります。これは、葉に含まれる成分の違いによるもので、まさに自然の移ろいが、そのまま一杯のお茶の中に映し出されているのです。
こうして和紅茶は、品種と季節の掛け合わせによって、無限の表情を見せてくれます。
生産者さんたちはそれぞれの土地に寄り添いながら、品種を選び、栽培に工夫をこらし、摘採のタイミングに心を配ります。紅茶用品種にこだわる人、在来種に可能性を見出す人、あるいは異なる時期のお茶を飲み比べて楽しんでもらいたいと願う人――。
そんな生産者たちの試みが、日本の紅茶に多様な魅力を与え、私たちの選ぶ楽しみを広げてくれています。